解剖医 ジョン・ンターの数奇な生涯 「ウェンディムーア、大野真千子 」河出書房新社

先日、YouTubeで本の紹介を見た。

https://youtu.be/Q8SgW_NAjZo

面白そうなので、早速、図書館に予約。

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本の入り口は、18世紀にロンドンで横行した、墓場での死体泥棒ビジネス。
そうした遺体盗難における影の首謀者であり、革命的な外科医でもある「ジョン・ハンター」の伝記。死体を盗む目的は、できるだけ新鮮な遺体を解剖し、人の構造や成り立ちを明らかにし、学ぶこと。


今から約200年前、そうやって近代外科の基礎を築いた偉人の伝記だった。


この本、とても、とても、面白い!


まだ、解剖と言う行為が普通では無かった時代、
解剖の為に、


・新鮮な死体獲得の為の墓泥棒。
・健康な状態で新鮮な遺体を求めての、絞首刑死体の獲得の為のドタバタ劇。
・妊娠期に亡くなった人の…。
・奇病、奇形の人の…。


そうした事柄も、ユーモア交えて書かれている。
(それをユーモアと感じるか?は人によるかな)


純粋な好奇心が元になっているとは言え、科学的な知見向上を目的とした行為が、主人公のジョン・ハンターの生涯を通じた目的としての側面が強く描かれている。


迷信に満ちた治療が主流だった時代に、医学に基づく治療の開祖と言える彼の側面が、小気味良くユーモア感も含めて描写されている。


しかし、日々、死体を求め。
毎日、死体を求め解剖を行う話しから始まる物語は、手に取り読み始めるのは厳しい本かもしれない。


そうした忌避感は、18世紀なら今より厳しかっただろう。

それでも、世の中に対して「好奇心」と「人を治療したい」との医師の使命と、科学的な姿勢で、とことん当時の世界に挑む姿。なのに、下品で人間味の溢れた主人公の話しは、心に響いた。


旧来の偏見や慣習と戦って、名を残した科学者は、何人も居る。

チャールズ・ダーウィンガリレオ・ガリレイエドワード・ジェンナー、…。ただ、そうしても、旧体制派や自分達の立場から、封殺され埋もれた科学者も沢山いる。この本のジョン・ハンターも、そうして封殺されかけた1人だったけれど、あまりの功績のため復活し、今、目の前の本になっている。

 

作中の「ジョン・ハンター」の言葉として共感したのは、
「伝統的な方法を試し、その結果を分析し、改善の為に仮説を立て、それを実行する」ことを基本とする。

「私(ジョン・ハンター)は、疑問を持つことが大好きだ。何故ならそれは重要なことを学ぶきっかけになるからだ」


講師として、生徒達に…。
「私は、自分の目からコレが生命の基本原則だと思えるものを、その時々で紹介してゆく。そして諸君には、既にわかっている事実と比較したり、推論すると言う姿勢を要求する」
「私が過去に言ったことや、書いたことは質問せんでくれ。現時点での私の考え方を知りたいなら、今すぐここで語ってやる」
「私の講義でノートを取らないように。もし取ったなら後で焼き捨てるように」

 

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図書館で借りたこの本、面白い!
読み終えて「もう、この本、終わってしまったか、もっと読みたいのに…」だった。

上記のジョン・ハンターの言葉や考え方の共感は私自身への反映があるけれど、その内の一つだけを…。


「伝統的な方法を試し、その結果を分析し、改善の為に仮説を立て、それを実行する」ことを基本とする」の姿勢は、私のダンスや武術での姿勢と通じる。

「教わったことを習得し試し、その結果を分析し、改善の余地が無いか?と検討し仮説を立て仮説に基づき訓練。仮説を実行しその結果を真摯受け入れ、教わったこととの差異を比較し、自分で考える」


そうしたことが、楽しいんだよな。

汗をかきアルコールを飲むことと併せて、ソレが武術とダンスの私の目的でもある。

他の姿勢や言葉や、考え方、感じ方にも、多々共感があるけれど、キリが無そうなので、書くのは、一つだけにする。


この本の価格は、2,200円との表記。
私の本棚は既に一杯だけど、注文するか、どうしたもんか。


私に限れば、目的に向かう真っ直ぐな視線と目的に向かう生き方は、生きる力をくれた本だった。